燃料費調整単価 ― 決まる日と、発表される日
電気料金の請求書にある燃料費調整額は、燃料費調整単価(円/kWh、以下「単価」)に 使用量を掛けたものです。単価は電力会社が毎月発表しますが、計算に使う値は財務省が 毎月公表する貿易統計 ― 原油・LNG・一般炭の輸入価格 ― で、発表より先に出そろい ます。燃料価格が約款の基準を下回る月は単価がマイナスになります。請求書にならって、 このページでもマイナスは ▲ で示します(▲7.19 は 1kWh あたり 7円19銭 の差引)。
算定式は、適用月の3〜5か月前にあたる3か月分の輸入価格を平均します。この 3か月を窓と呼びます。窓の最後の月の貿易統計が公表された時点で、その月の単価は 計算で決まります。この日を確定日と呼びます。
確定日から先を数えます。母数は、当時の速報値がそろっていて既定の窓で確定する 2024年11月分から2026年9月分までの23か月です。この23か月では、確定日から請求の 対象になる月の初日まで37〜46日(平均42.5日)ありました。確定日から電力会社の 発表までは、発表日を各社が「◯月分」を出す慣例どおり2か月前の28日に置くと 5〜11日(平均8.7日)、このページが実際に使う締切(2か月前の月末)に置くと 8〜14日(平均11.1日)です。二つの置き方は一致しないので、日数はどちらで数えた かとともに読んでください。
確定するのは、窓が出そろった月だけです。今日の時点でそれは直近の1〜2か月 で、それより先の月は入力そのものがまだ公表されていません。このページは、 確定した月を柱で埋め、その先は同じ図の中で、輸入価格を振ったときに単価が どこに散らばるかを帯で描きます。境界より先の月は、計算ではなくシミュレーション です。
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なぜ発表より先に分かるのか
算定式に外から入る値は、貿易統計の3か月分だけです。α・β・γ も基準燃料価格も 基準単価も約款に固定されていて、月ごとに動きません。つまり単価は予測の対象では なく、入力が出そろった時点で答えの決まった算術です。
貿易統計は、対象月が終わってから17〜23日後に速報を出します。窓の最後の月は 適用月の3か月前なので、速報はどうしても電力会社の発表より先に届きます。この ページが埋めているのは、値が決まってから発表されるまでの数日です。
境界より先 ― 帯の読み方
図の途中に破線が一本あります。その左は、公表済みの貿易統計から算定式で出した 数字です。右は、まだ公表されていない月について輸入価格を振ってみた結果で、 計算ではなくシミュレーションです。破線は、その二つが入れ替わる場所です。
振り方は三段です。まず、取引所で値がつく指標 ― ブレント原油、ヘンリーハブ 天然ガス、ニューカッスル一般炭、そしてドル円 ― を、それぞれの年率変動率と 相互の相関にしたがって毎月動かします。次に、その指標から貿易統計の輸入価格 (CIF)を推定します。指標と CIF は同じものではなく、輸送費・仕向地・契約 形態のぶんだけ常にずれます。このずれをベーシスと呼びます。最後に、推定した CIF を算定式に入れて単価にします。
ベーシスは毎月ゼロに戻るわけではありません。今月大きくずれていれば来月も ある程度ずれています。この「前月のずれをどれだけ引きずるか」を当てはめたのが ベーシスのモデルで、引きずりが半分に薄れるまでの月数を半減期と呼びます。 指標から CIF への反応は同じ月ではなく数か月遅れて出るので、脚ごとに何か月 遅れかも当てはめています。過去の実績にモデルを当てはめて、こうした係数・σ・ ラグを決めることを較正と呼びます。詳細設定に出る「較正値」は、この当てはめから 出た値です。当てはめた値は下表のとおりです。
帯は、こうして作った経路を月ごとに並べ、下から数えて何%の位置にあるかで 区切ったものです。この「下から数えた位置」を分位と呼びます。既定では経路は 10,000本、外側の帯は5%から95%までで、経路の9割がこの中に入ります。内側は 25%から75%で、半分がこの中に入ります。中央の線は50%、つまり真ん中です。 経路数を減らすと、裾の分位を支えるだけの本数がなくなるので、帯はより内側の 分位に切り替わります。図の下の一行が、そのとき実際に描いている分位を書きます。
帯の幅は先の月ほど広がります。近い月は窓の一部がすでに公表済みで、動く余地 がその分だけ小さいためです。窓が全部そろった月は幅がゼロになり、柱に変わります。
図の上に出る期間合計は、経路ごとに全期間を足してから並べ直した中央値です。 表の各月の中央値を足した額とは少しずれます。中央値は足し算では動かないためです。 確定した月については、シミュレーションの値ではなく表と同じ確定値を足しています。 確定した月の単価は、電力会社が発表した時点の貿易統計で計算するものだからです。
ヘッジと、分散の出どころ
詳細設定でヘッジ数量を入れると、そのポジションの損益を単価の変動から差し引いた ときに分散がどれだけ下がるかを月ごとに出します。数量の初期値はゼロで、 「最適な」数量を自動で入れることはしません。数量を決めるのは利用者の判断です。
残った分散は五つの要因に分けて表示します。ベーシス(指標と CIF のずれ)、 タイミング・ラグ(指標が何か月前の値として効くか)、ウィンドウ平均(窓の月を 平均することで生じるならし)、為替、上限の折れ(上限に当たると単価が横ばいに なること)の五つです。分け方はシャープレイ値 ― 複数の要因が一緒に作った量を、 要因ごとの平均的な寄与に分ける配分則です。ある要因を入れたときと外したときの 差を、ほかの要因のあらゆる組み合わせについて平均します。ここでは五つなので 32通りすべてを走らせます。書く順番で答えが変わらないのが、この配分則を使う 理由です。取り分が負になることもあります。その要因を入れると分散が上がるのでは なく下がる場合です。32通りを走らせること自体は書く順番から答えを独立させるだけ で、符号とは関係ありません。たとえば上限は、上振れの裾を切り落とすぶんだけ分散を 減らします。
算定式
平均燃料価格 = round100( α×原油 + β×LNG + γ×一般炭 ) 燃料費調整単価 = round銭( (平均燃料価格 − 基準燃料価格) × 基準単価 ÷ 1,000 ) − 国の支援
原油は円/kl、LNGと一般炭は円/t です。α・β・γ は各燃料の熱量構成比に原油換算 係数(原油に対する発熱量の比の逆数)を掛けたもので、基準燃料価格・基準単価と ともに各社の約款に載っています。除数が1,000であることと、丸めが四捨五入で あることは、どちらも単価を1銭ずらす原因になります。
国の支援は、国の電気・ガス料金支援による値引き(円/kWh)です。実施が決まった月 だけ単価から引かれ、特別高圧は対象外です。各社が公表する燃調表はこれを引いた あとの単価を載せるので、上の1行目と2行目だけを再現して公表値と比べると、支援の 額ちょうどだけ合いません。表の「燃料分」の列は、この支援を引く前の値です。
実装は関西電力(14か月)と東京電力エナジーパートナー(5か月)の公表済み 19か月分を銭単位で再現します。特別高圧を含めた料金メニュー単位では33件です。 係数と検証手順は方法論に、 エンドポイントはAPI リファレンス にあります。
詳細設定では α・β・γ と基準燃料価格・基準単価をその場で書き換えられます。 自社の燃調条項を持つ新電力は、登録済みの約款ではなく自社の係数で計算できます。 書き換えると熱量構成比の合計をその場で計算して表示するので、桁の打ち間違いは その行で分かります。
上限
上限価格は基準燃料価格の1.5倍で、規制料金にのみ残っています。大手10社は 2022年10月から2023年5月にかけて自由料金の上限を撤廃しました。上限は単価を 切るのではなく平均燃料価格そのものを置き換えるので、上限に達した月は表に 「上限」と表示されます。
上限のある料金は、燃料価格がどれだけ上がっても単価がある水準で頭打ちになります。 同じ会社の規制料金と自由料金で、同じ月の単価に差が出るのはこのためです。料金 メニューの比較は、その分だけ単価の高低だけでは決まりません。
データ
財務省貿易統計(原油及び粗油 30301 / 液化天然ガス 3050103 / 一般炭 3010105) と、各社約款の公開パラメータ。一般炭は石炭の集計値ではなく品目別の系列を 使います。集計値には原料炭が混ざり、単価が1割ほど高く出ます。
貿易統計は速報・確速・確報・確々報と改定されます。改定は上書きせず別の ヴィンテージとして保持しているので、各社が発表した日に見えていた値で再現 できます。この時点別の収録は2024年1月から、最終改定後の系列は1988年1月から 直近の公表分まで、欠測なく続いています。
シミュレーションの指標は、EIA のスポット価格と連邦準備制度の為替レート (いずれも米国政府著作物)です。一般炭の指標だけは再配布できないライセンス なので、水準そのものではなく、公表済みの CIF と当てはめた残差から逆算した 起点だけを使います。逆算できるのは1点なので、一般炭には履歴がありません。
計算結果であって助言ではありません。利用規約をご覧ください。請求額は契約先の発表値をご確認ください。境界より先の月は、公表された入力から計算した値ではなく、モデルによる推計です。